JORTC市民公開セミナー

第6回 JORTC市民公開セミナー in 東京
『緩和ケアを知ろう!~実は知らない漢方と緩和ケア~』

12月 2日(土)「第6回JORTC市民公開セミナーin東京」を開催しました.

・3月05日(月)講演動画2演題をさらに追加しました.
・2月28日(水)講演動画2演題をまずは追加しました.
・2月10日(土)Q&Aコーナーを追加しました.




■イベント報告

第6回JORTC市民公開セミナーは、「緩和ケアを知ろう!~実は知らない漢方と緩和ケア~」と題して、新たなテーマでの第1回以来の東京開催となりました。

緩和ケアと漢方薬。会場いっぱいの参加者の皆さんとともに、研究と臨床の各最前線で多岐にわたり活躍されている医師・薬剤師であるエキスパートの先生方より、日常ではまず聞くことができないお話をそれぞれのお立場から大変わかりやすくご講演をいただきました。参加者の皆さんも、驚きとともに、緩和ケアと漢方薬のイメージが大きく変わったのではないでしょうか。

また、皆さんの思いとともに、いつにも増してすごく多くのご感想・ご質問もいただき、やはりQ&Aセッションの時間だけではお答えしきれませんでした。お答えしきれなかったご質問等も含めて、別途フィードバックさせていただきたいと考えております。

参加者の皆さんもちろん、司会・演者の先生方はじめご協力・ご支援いただきました関係各位の皆さま、改めまして厚く御礼申し上げます。
今後も皆さんの声をいただきながら、セミナーはじめさらに有意義な企画を開催していきたいと考えております。 関係各位の皆さま、今後ともご協力・ご支援の程、何卒宜しくお願い致します!


◇会場風景写真


講演演者 上園先生, 大西先生, 木内先生, 渡邊先生(講演順)司会 古賀真美さん、なかなか聞けない貴重なお話を有り難うございました!


Q&Aセッションでは、いつもにも増して、参加者の皆さんよりかなり多くのご質問をいただき、その一部ですが大いに討論できました。お答えしきれなかったご質問等についても、準備できましたら別途掲載させていただきたいと思います。


■講演動画閲覧

「抗がん剤の副作用軽減に役立つ漢方薬
 -科学的根拠に基づいた適切な処方選択-」
 上園 保仁 先生

  国立がん研究センター研究所
  がん患者病態生理研究分野 分野長
  先端医療開発センター 支持療法開発分野 分野長
「漢方の科学的根拠を求めて
 -適切な緩和ケアのための臨床研究-」
 大西 俊介 先生

  北海道大学大学院 医学研究院 内科学分野
  消化器内科学教室 准教授
「緩和ケアで用いられる漢方」
 木内 大佑 先生

  国立がん研究センター中央病院 緩和医療科
「薬剤師からみる漢方薬」
 渡邊 文 先生

  東京大学医科学研究所附属病院
  薬剤部医薬品情報管理室/緩和医療科
  薬剤主任



●Q&Aコーナー

本会時のアンケート記載いただいたご質問について、会場でお答えしきれなかったものも含めて、
司会・演者の先生方からコメントをいただきました。ぜひご参考ください。



Q1
乳がんによる転移で抗がん剤(T8-1)治療中です。担当医が漢方の使用に否定的です。抗がん剤治療中の漢方薬の使用時の注意点は?

A1
乳がんの化学療法で用いられる薬剤と併用できないとされている漢方薬はありません。しかし、治療担当の先生方の意見で多いのは「薬物相互作用で抗がん治療に影響を与える可能性が明らかになっていない」「肝障害などが出てきたときに病状の変化によるものか、抗がん治療によるものか、漢方薬などそれ以外の薬剤の影響か、判別がつきにくくなる」などです。ですので、担当の先生とよく相談して「期間を決めて使用して悪影響があると先生が判断されるのであればすぐ中止する」など、担当の先生が安心し納得できる方法について話し合ってみるとよいと思います。


Q2
がん緩和ケアを受け始めるタイミング、および、患者への緩和ケアを受ける勧め方・伝え方、一般啓発の必要性などをご教示ください。

A2
緩和ケアは、がんが進行した時期だけでなく、がんが見つかったときから治療中も必要に応じて行われるべきものとされています。一方で、病気の進行や治療に関する不安や悩みがある患者や家族の中には、緩和ケアの紹介=悪い知らせと受け取る方もおられます。ゆっくりと時間をとってその方の緩和ケアに関するイメージについて尋ねたうえで、日常生活やがん治療を行っていくうえでの困りごとや改善希望に焦点を当て、その人らしさを尊重しながら提案していくとよいと思います。こちらWEBページ(緩和ケア.net / 国立がん研究センターがん情報サービス)なども参考にされるとよいでしょう。一般啓発もまだまだ十分でない状況なので、これらのWEB情報や学会活動、市民公開講座や医学教育の見直しなども含めて行っていく必要があると思っています。


Q3
8年程漢方専門医の処方した煎じ漢方薬(オウギ・ブシ・カッコン・シャクヤク他)を服用しています。血液検査でGPT・LDH・γ-GTPが少し高めです。血液内科の主治医から「漢方薬の影響だろう」と言われていますが、どうなのでしょうか。

A3
検査値異常の原因は、薬剤の影響以外に臓器機能の問題や、アルコールや食事やウイルス感染症など様々です。漢方薬が原因の可能性もありますが、他の原因によるものの可能性もあります。一般に薬剤が原因と考えられる場合は、疑わしい薬剤を一定期間中止し検査値が改善するかどうかを確認します(状況によっては再開により再度異常が再現されるかを確認したりもします)。主治医の先生と漢方薬継続について相談してみるとよいと思います。


Q4
大腸がんを手術した者ですが、がん知識が全く有りません。標準治療薬の定義(ガイドライン?)、六君子湯や半夏瀉心湯は標準治療では無いのか・主治医にこれらの処方を申し出ても支障は無いか・これらは保険適用の有無など、よければご教示ください。※現在抗がん剤を服用中ですが実感する副作用の出現はみられません。

A4
がん治療の標準治療とは、現在そのがんで用いられる、科学的根拠が一番ある処方のことです。がんに対して抗がん剤がどのように選ばれているか?が標準治療となります。抗がん剤治療を計画通り進めるには身体がそれを受け入れることが重要で、そのために副作用をできるだけ軽減することがのぞまれます。そのための対応策のひとつに漢方薬の使用があるということで、漢方薬使用が標準治療にはいっている、はいっていないということではありません。
六君子湯、半夏瀉心湯など医師が処方する漢方薬を「医療用漢方薬」とよびこれらは保険がききます。


Q5
半夏しゃ心湯をお湯で溶かし、うがい(口にふくんですみずみまでゆき渡らせる)したことが何度かあるが、溶けにくい、粒が残るーすべて溶けなくても良い?もしくは、ただ飲んだ場合とどの位、効果が異なるのか?

A5
お湯で溶かしてうがいをしていただくのですが、すべてが溶ける必要はありません。飲んだ場合は内容が腸から吸収されるのでさらに効果的な成分が取り込まれている可能性が高いので、飲んだ方が効くという想像はできると思います。


Q6
漢方薬は多剤併用して問題ないですか?たとえば、六君子湯、半夏瀉心湯、大けん中湯等、一度に全てを使用する場合、肝/腎機能に影響しないでしょうか。(患者さんが処方された漢方薬以外に薬局で購入して内服されていることがあります)
また、漢方薬同士の併用について、禁止されている漢方薬はありますか?西洋薬との飲み合わせで禁止されている薬がありましたら知りたいです。

A6
例に挙げていただいた3剤は併用可能です。二種類以上の漢方薬使用による肝障害/腎障害の頻度増加は明らかになっていませんが、一般薬剤と同様に注意深く副作用評価をしながらであれば安全に多剤併用できると考えております。漢方薬同士の併用で禁止されているものはありませんが、甘草ほか特定の生薬の量が多くなる場合は、より注意深く診ていく必要があります。西洋薬との飲み合わせで有名なのはインターフェロン製剤と小柴胡湯との併用が間質性肺炎の副作用のために禁忌とされています。
漢方薬はたくさんある生薬を組み合わせてできています。また基本の生薬にいろいろと組み合わせていくことで別の名前の漢方薬ができあがります。例えば2剤からなる芍薬甘草湯(芍薬+甘草)に何種類かの生薬が加わり、桂枝湯(5種)になったり葛根湯(7種)になったりします。生薬の中で、甘草が入っている漢方薬は多いのですが、この甘草は増えると低カリウム症などの副作用を起こします。従いまして、併用しても構いませんが、甘草など一部の生薬が蓄積しないよう、気をつける必要はあります。


Q7
普段の臨床経験から「食欲不振」という主訴で病院へ来られる方が本当に多いのですが、「六君子湯」を処方する際に避けた方が良い方はいますか?例えば、こんな薬を飲んでいる方とか、こんな病状が他にもある方とかなど。

A7
飲み合わせは問題ない場面が多く、甘草の含有も少なめではありますが、他剤で甘草を多く併用している場合は注意して処方するとよいと思います。また胃腸虚弱者の諸症状に用いる場合は、冷えが主症状であるなら人参湯などが、比較的元気がある人なら半夏瀉心湯などのほうが合うことがあります。体質や効果判定によって使い分けてもよいかもしれません。


Q8
大学の医学部教育において、漢方治療や緩和ケアに関してはどのように扱われている(または扱われていない)のでしょうか。

A8
・医学部教育において、漢方と緩和ケアは扱われておりますし、使用頻度の高いものについては国家試験にも出題されています。
・2000年より大学医学部の教育に漢方薬が加わりました。現在ではほぼすべての医学部で漢方教育が行われています。支持療法、緩和ケアの教育についても医学部教育の中で導入されている医学部のほうが多いです。


Q9
漢方薬にもよるとは思いますが、同じ薬でも食前、食後が異なることがあります。厳密に守らなくても良いのでしょうか?病棟薬剤師には、正直患者さんの生活スタイル内服状況に合わせてもらえば良いと言われました。

A9
・空腹時や食前の方が吸収が良いから、または西洋薬との相互作用を避けるためとおっしゃる先生もいますが、その根拠は明らかになっていません。一部の胃に対する作用のある漢方薬は消化機能を助ける意味で食前に飲んだ方が効果が期待できるため、食前が推奨されますが、食前または食間で飲み忘れが多いようであれば、全て食後に服用していただいます。服用することが一番重要です。
・漢方薬はまず飲んでいただくことが重要なので、ことさら食前、食間、食後にこだわることはありません。ただ動物実験などで、胃の中に内容物が入っているとき(満腹であるとき)には漢方薬の有効成分の吸収が悪いことがわかっています。従いまして、有効な利用のためには、食前や食間が薦められるということです。


Q10
漢方薬の使用評価はどのくらい服用続けて行うべきなのでしょうか。

A10
方剤により比較的速やかに臨床症状の改善がみられるものから、長期連用が必要なものもあります。また、目的とする症状の改善がみられるまえに、舌/脈/腹診の所見が改善してきたり、付随する症状(体力や食事量など)が改善してくることもあります。方剤ごとの違いや体調全体の変化をみながら評価期間を決めていくとよいと思います。


Q11
主治医と院外調剤薬局(の薬剤師)との連携状況は?※患者の治療経過の共有など

A11
院外薬局の薬剤師は処方せんの中で疑問に思う箇所がある場合は、医師に確認することが義務付けられています。また、最近は院外処方せんに血液検査のデータを記載する施設も増えています。さらに、退院時に病院の病棟薬剤師が入院中の服薬状況、副作用の情報などをお薬手帳に記載する施設もあり、患者さんから伺う情報のみならず、医療者からの客観的な情報も把握することができます。


Q12
保険診療で使える漢方薬(「今日の治療薬」に掲載されているもの)は150種ほどあると思いますが、これらは、いわゆる”合剤”だと思います。本当にこの組み合わせがベストなのか?今後も(今も昔も)新しい漢方薬は開発されているのか?配合の比率は変えると効果がかわってくる可能性はないのか興味あります。

A12
・複数の生薬を組み合わせた方剤は、東洋医学の理論に基づき、薬理作用と指向性を強化するようつくられています。多くの方に使いやすく効果が出やすいように設計されていますが、慣れた漢方医/漢方薬局では患者さんごとに生薬を組み合わせたり配合比率を変えたりして、効果を調整している方もおられます。
・漢方薬は昔の書物に基づいて生薬の選択、割合が決まっています。今日私たちが手にすることのできる漢方薬はほぼ昔の書物に基づいて作られています。実験などである一部の生薬を多くしたり少なくしてみたりということが行われたことがありますが、私の知る限りでは、現在の組み合わせを超えるような素晴らしい働きをする「漢方薬」はありません。長い年月をかけて、生薬の組み合わせや割合が決められており、それはおそらく最大の効果を出すように作られていると思っています。


Q13
半夏しゃ心湯で思うのですが、西洋薬の後発薬のようにメーカーによって溶け方・効き方は違いますか?値段もちがいすぎているかと。

A13
半夏瀉心湯というお薬でも各メーカーでいろいろな作られ方がされているので完全に同一ということはありません。また含まれる生薬の容量も製品によって異なります。価格についても、各社が決めているのでそれが異なることもあります。


Q14
抑肝散の長期服用は副作用等の可能性はないのでしょうか?たとえば、どのくらいの期間なら問題ないとか、分かりうる範囲で教えて下さい。

A14
抑肝散に特異的な副作用として偽性アルドステロン症が知られています。また非特異的なものとして肝障害などもあります。これらは使用期間と頻度の関連は明らかになっていません。経験上はまれですが、服用早期から起こる場合も、長期服用で起こる場合もありえます。高血圧や脱力感に注意しながら、定期的に血液検査を行うことで対策できると考えます。


Q15
漢方薬と西洋薬の混合利用は可能でしょうか。

A15
混合利用は可能です。





●開催概要

日時:  2017年 12月 2日(土)13:00~16:00[受付開始 12:00]
場所:  ヒューリックホール&カンファレンス3F ROOM 0
     〒111-0053 東京都台東区浅草橋1-22-16 ヒューリック浅草橋ビル
     交通アクセスはこちら
対象:  患者さん・ご家族はじめ一般市民、医療従事者の皆さん
定員:  100名(先着順)※事前申込み必要
参加費: 無料
=主催= NPO法人JORTC
=後援= 厚生労働省 / 東京都 / 特定非営利活動法人日本緩和医療学会 /
(予定) 一般社団法人日本癌治療学会 / 公益社団法人日本臨床腫瘍学会 /
     認定NPO法人キャンサーネットジャパン

開催案内パンフレット/参加申込書はこちら

≪開催当日の注意事項のお知らせ≫
① 施設・会場への立入りについて
セミナー当日 12月2日(土)は、会場施設への立入りは12:00以降となります。 12:00までは会場への立入りができませんのでご注意ください。受付は12:00開始予定です。
② 会場での飲食について
会場内でのご飲食はご遠慮ください。
③ 写真撮影について
当日の会場内では、ホームページなどへの報告掲載・開催記録を目的として、 運営スタッフが写真撮影・講演動画収録を行ないます。ご了承ください。 参加者の皆さまのお顔を撮影することはございませんのでご安心ください。



●プログラム / 演者からのメッセージ

□司会□ 古賀 真美 氏
(認定NPO法人キャンサーネットジャパン プロジェクトマネージャー)


13:00 ■開会挨拶■
上園 保仁 先生(国立がん研究センター)


13:05~■ 講演1 ■

『抗がん剤の副作用軽減に役立つ漢方薬
 -科学的根拠に基づいた適切な処方選択-』

 上園 保仁 先生
 国立がん研究センター 研究所
 がん患者病態生理研究分野 分野長 / 先端医療開発センター 支持療法開発分野 分野長

≪上園 先生からのメッセージ≫


13:35~■ 講演2 ■

『漢方の科学的根拠を求めて
 -適切な緩和ケアのための臨床研究-』

 大西 俊介 先生
 北海道大学大学院 医学研究院 内科学分野 消化器内科学教室 准教授

≪大西 先生からのメッセージ≫


=休憩=(14:05-14:15)


14:15~■ 講演3 ■

『緩和ケアで用いられる漢方』

 木内 大佑 先生
 国立がん研究センター中央病院 緩和医療科

≪木内 先生からのメッセージ≫


14:45~■ 講演4 ■

『薬剤師からみる漢方薬』

 渡邊 文 先生
 東京大学医科学研究所附属病院
 薬剤部医薬品情報管理室/緩和医療科 薬剤主任

≪渡邉 先生からのメッセージ≫


=休憩=(15:15-15:25)


15:25 ■Q&Aセッション■

会場アンケートでいただいた質問をテーマに、講演演者の先生方が討論/回答していきます。


15:55 ■閉会挨拶■
坪井 正博 先生
JORTC理事長/国立がん研究センター東病院 呼吸器外科 科長



●参加申込み方法

参加ご希望の方は、①代表者氏名(ふりがな)②人数 ③ご連絡先(電話番号 or Eメールアドレス or FAX番号)をご記入のうえ、EメールまたはFAXにてお申込みください。
※上欄の案内パンフレット/参加申込書もご参照ください.

≪参加申込み締切日≫2017年 12 月 1 日(金)



●参加申込み・お問い合わせ先

「特定非営利活動法人JORTC事務局」木原・佐藤 宛
 E-Mail:info@jortc.jp TEL:03-5604-9850 FAX:03-5604-9851


掲 載 日:2015年07月27日
最終更新日:2018年03月05日