一般の皆様へ
臨床試験についての4つのメッセージ
1.臨床研究とはなんですか?
がん領域では、医療者はいつでもより有効で、副作用の少ない治療を開発して、がん患者の生存率や生活の質を改善させることを目指しています。 臨床研究は、将来の患者に対して最適な治療法を明らかにするための研究です。新たな薬剤や投与方法が、安全で効果があることを確認するために行います。
2.どうして臨床研究をおこなうのですか?
医療者はどのようにして治療方法を決定するのでしょうか? 治療の効果があるかどうかは、やってみないと分かりません。だからこそ治療前に、もっとも効果があることが期待される治療を選ぶのが医療者の仕事です。 医療者はまず患者さんの病状を把握します。そして、同じような病状の人たちの過去のデータから一番効果があると思われる治療法を選択するのです。 臨床研究は、そのデータをつくる研究です。現在有効とされている薬剤や治療法は、数多くの患者さんの協力によって集積したデータに基づいたものです。患者さんの協力なくしてデータは集まりませんし、データなくしてよりよい治療法は確立されません。
3.臨床研究はどのような研究なのでしょうか?
臨床研究では、新しい薬や新しい治療法の効果や副作用のデータを集めます。データは他の治療法と比べるとより有用なものとなります。昔のデータと比べることもあれば、一つの研究の中でいくつかの治療法をくらべることもあります。比べる対象によって、第I相から第IV相と臨床研究が段階付けされることもあります。JORTCでは第I~III相までの研究を中心に行っています。 患者さんへの治療は、ひとりひとりに最適なものでなくてはなりません。ただ、治療法を比較するときに、全員に異なる治療法をしていては、治療の効果があったのか、患者さんの病状や体質が原因なのかが分かりません。そこで臨床研究では、患者さんに最適な治療法を提供しながらも、不利益が生じない限りは、治療法を事前に決めておいたり、同じタイミングで検査をしたりするようにしています。
4.無作為化(ランダム化)比較試験とはなんですか?
二つ以上の治療法のなかで優越を決める決勝戦で使われる方法です。例えば、二つの治療法があり、どちらが優れているのかがわからなかったとします。医療者がどちらかを選択すると、各人の偏見が入ってしまいます。これは患者さんが選んでも同じです。このような偏りがあると、データとして信用できないものになります。これを防ぐには、第3者にどちらの治療法を選択するかを決めてもらうのが一番です。これを無作為化(ランダム化)と言います。 第3者が判断するのは不安に思われるかも知れません。医療者はそのような治療法・研究を提案している時点で、どちらも同じように有効と考えています。したがって、どちらに当たっても患者さんの不利益にはなりません。もちろん、そのような選択に不安があるのであれば、試験に参加しないで、いままでの治療を選ぶことも出来ます。
解説:国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科 後藤 悌 先生
掲 載 日:2012年12月03日
最終更新日:2015年05月18日